先日、急速に進んでいた円安について「円安でBPO業界はどうなった?為替レートとBPOの関係」の記事で、円安の状況や海外アウトソーシング(BPO:ビジネスプロセスアウトソーシング)に与える影響などを整理しました。
周りでは、円安の影響で今の委託量が高騰し、ビジネスが成り立たない水準になりそうといった声も聞こえています。今回は影響額がどのくらいなのかを見つつ、その対策を考えてみたいと思います。
円安の影響って??
円安の動向については前の記事で整理しましたが、もう少し具体的な影響額を見ていきます。
例えばアメリカドル/日本円のレートを見ていくと、5年間では約113円→約133円(2022年12月29日時点)となっていて、2022年になってから急速に円安になっています。
海外へのアウトソーシングを行っていた場合、為替レートでは約18%の増加になりますので、例えば1,000ドル→113,000円で委託していた場合、133,000円となり20,000円のコスト増になります。
これがどの程度のインパクトなのかを見ていくと、一般社団法人情報サービス産業協会が公開している「2021年版情報サービス産業基本統計調査」から、情報サービス業の指標を使って簡易的に見ていきます。
- 売上高営業利益率(平均値):8.41%
- 売上高外注比率(平均値):31.05%
計算しやすいように数値を丸めてあてはめると、以下のような数字になります。
売上高:100,000千円
外注費:31,000千円(31%)
営業利益:8,400千円(8.4%)
仮に外注費=海外アウトソーシングだとした場合、作業内容が変わらなくても為替の影響(113円→133円)で大きき利益を減らすことになります。
売上高:100,000千円
外注費:36,490千円(約36%)
営業利益:2,910千円(約2.9%)
もちろん外部委託がすべて海外ということは珍しいと思いますしここまで単純ではないですが、為替で値上がりした分は利益が下げることになるので、その影響は大きくなります。前回の記事を書いていた時は1ドル約147円でしたので、上記の数値よりもさらに悪い数値になります。
売上高:100,000千円
外注費:40,300千円(約40%)
営業利益:△900千円(-1%)
では、どのように対策をするか?
為替の影響でコスト増になった場合、大きくは2つの対応が必要になると考えています。一つ目は「売価を上げる」ことです。
今までと提供しているサービスや価値が変わらなくて価格だけを上げるのは、交渉としてなかなか難しいですが、ITサービスを提供している会社は国内/海外問わず価格アップをしているところが多く見受けられます。
有名なところでは、11月には日本マイクロソフト社も為替変動の影響に伴い、提供価格の改定を行っています。
日本マイクロソフト、法人向けライセンスおよびサービスの価格改定について
価格交渉は、根気強くお客様と交渉する必要がありますが、やらないと何も変わりませんので少しでも前に進めていく必要があります。
もう一つは、前の記事でも少し触れた「円高に動いている国に委託する」方法があります。
例えばミャンマーチャット/日本円のレートを見てみると、5年間では0.083円→0.064円(2022年12月29日時点)と円高になっています。
これは為替レートでは約30%の低下になりますので、例えば100,000チャット→8,300円で委託していた場合、6400円となり1,900円のコスト増になります。円安の時とは逆に、為替の影響だけでコストダウンが実現されます。
為替の影響だけで委託先を変えるなんて大げさと思われる方もいるかもしれませんが、海外と取引する場合は付きまとう課題ですし、その影響は小さくないと思っています。
最後に
為替レートは様々な要因によって変動しますし、上がるか下がるかを予測することはとても難しいと思います。為替だけでなく情勢なども見ながら、1か国に依存するだけでなく複数の候補先を天秤にかけながらリスクヘッジができるようにしていくことが望ましいと思います。
当社では、ミャンマーBPOサービスとして各種委託業務やご相談を承っておりますので、ご興味がある方は、お気軽にお問合せください。
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それではまた。
アンドファン株式会社
中小企業診断士 田代博之