新型コロナウイルスによる影響はまだまだ大きく、ニュースでも新型コロナウイルスによる倒産件数が定期的に流れていますが、昨今の物価高などの影響で、経営的に苦しさが増している企業様も多いのではないでしょうか。
先日、中小企業診断士の資格更新のために研修を受講してきた中で、中小企業の倒産に関する興味深いアンケートが共有されましたので、ご紹介しつつ思うところを整理していきたいと思います。
倒産に関するアンケート
今回ご紹介するアンケートは株式会社YKプランニング様が、直近10年以内に倒産経験がある元経営者を対象に、「企業の倒産理由や原因」に関する調査を行った内容となります。
母数は約1,000名になっています。2021年の倒産件数が約6,000件ですので、少しバラつきはあると思うのですが、何とも踏み込んだ内容のアンケートでよくこれだけ集められたなという印象です。
まずは「倒産の原因となったものとして近いものはどれですか?(複数回答可)」を見ていくと、「販売・客足の低下」が頭一つ抜けています。
- 販売・客足の低下:49.8%
- 原材料の高騰や供給不足:19.7%
- 売掛金の回収不能:18.2%
- 人手不足:17.7%
様々な理由の中でも、やはり売上の低下が危険信号になっていることがわかります。「入るを量りて出ずるを為す」と言われるように、収入予定に対して資金繰りや支出の計画を立てると思います。当たり前ですが、入る部分の売上が予定より減っていけば苦しくなりますし、一定の線を越えれば会社として成り立たなくなってしまいます。
別の質問で「倒産を予兆した際、どのような対策を行いましたか?(複数回答可)」でも、倒産の危機を感じ取った場合、売上を上げるための対応と、手元資金を確保する対応をしている企業が多くあります。
- 新しい事業への転換:24.6%
- 営業活動・マーケティング広告の拡大:16.3%
- 追加の資金調達:16.2%
倒産の原因として「販売・客足の低下」が多かったので、その対策として売上を何とか取り戻そうと動くのは自然な流れだと思います。
その時、誰に相談する?
ここまでは凡そイメージ通りの内容でしたが、次の質問では少し違和感がありました。
「倒産前(1年以内)に誰に相談していましたか?(複数回答可)」の質問に対する、TOP5の回答が以下になります。
- 顧問税理士・会計士:40.0%
- 家族:24.9%
- 経営者仲間:21.1%
- 金融機関:18.8%
- 社内従業員:16.5%
恐らく家族や従業員へは、協力や理解を求めるために相談したのだと思いますので、本筋とは違うと思っています。前述した売上の相談や資金繰りの対策をするために相談したとなると、「顧問税理士・会計士」「経営者仲間」「金融機関」になるかと思います。
私が気になったのは大きく2つで、①倒産の危機を感じても周りに相談する経営者が少ないこと、②「新しい事業への転換」「営業活動・マーケティング広告の拡大」の対策に対する相談はあまりしていないように思えることです。
特に②は回答の選択肢の中で「経営顧問・経営コンサルタント」が8.1%と低く、「誰(どこ)にも相談しなかった」の10.6%よりも低い数値になっています。「経営」に対する顧問やコンサルだからなのかもしれないですし、そもそも税理士ほど顧問としてコンサルを抱えている会社が少ないのかもしれません。
私の周りにいる中小企業診断士でも新規事業や営業・マーケの専門家はいますし、公的機関であれば無料で専門家の支援を受けることができます。どこまで何ができるかはわかりませんが、中小企業診断士も困った時の相談先として認知されるように、頑張らないといけないと思いました。
最後に
最後に、反省を生かすという意味で「“やっておけば良かった“あるいは“倒産を防ぐことができた”と思うことはありますか?(複数回答可)」という質問の回答を見てみます。
「不測の事態を考慮した内部留保(資金留保)」が38.5%と一番高かったですが、次いで、「行き当たりばったり経営でなく計画的な事業の推進」が30.0%、「経営戦略面での決断(新しい事業への転換、新市場への参入、不採算事業の撤退など)」は25.0%と高くなっています。
これを見ると、計画的に事業を運営し、適切に利益を確保(内部留保)しつつ、外部環境の変化に併せて必要な決断していくことが大事なのだと感じました。
私自身も、年に1回は自分の行動計画や数値計画を立てるようにしていますが、少し先のことをイメージしながらあれこれと考えることは、自分自身の整理にもなりとても貴重な時間に感じています。お忙しいとは思いますが皆さんも、計画を考える時間を作ってみて下さい。
それではまた
アンドファン株式会社
中小企業診断士 田代博之