(2018年7月6日 最新情報に更新するため追記しました)
おはようございます。
最近、TVやニュースでもよく聞く「IoT(Internet of Things)」ですが、第4次産業革命のコアとなる技術革新としされ、「AI(人工知能)」「ビッグデータ」と併せてとても大きな注目を浴びています。とはいえ、IoT自体は概念的意味合いが強く「実際の認知度や導入は進んでいるのか?」と疑問を持つことがあります。私も気になったので、官公庁が出しているデータとIoT関連資格の側面から、実際の盛り上がりを見てみます。
官公庁データからみるIoTの盛り上がり
まずは官公庁が公表しているデータとして、総務省が発行している「平成29年度版 情報通信白書」の中から、企業への普及状況を見てみます。 IoTが重要な要素とされている「第4次産業革命」への対応段階としては、下図のように日本は約50%弱の企業が「検討段階」となっています。同様の取り組みをしている諸外国と比べると、少し遅れている状況が見て取れます。(ITAC企業とはIoT推進コンソーシアム加盟企業)
第4次産業革命への対応の段階
出典:総務省「平成29年度版 情報通信白書」より
次は、IoT・ビックデータ・AIが、プロセス及びプロダクトに対してどの程度導入されているのか、また導入される予定なのかを見てみます。こちらではIoTに関してはプロセスの方が導入に対して前向きであり、2025年には70%程度の企業が導入する見込みであることがわかります。しかしながら諸外国では、同年にほぼすべての企業が導入する見込みであると言われていますので、決して高い数字ではないと考えます。
日本企業のIoT・ビッグデータ・AIの導入状況及び導入意向(左:一般企業/右:ITAC企業)
出典:総務省「平成29年度版 情報通信白書」より
2030年の実質GDPを132兆円押し上げると言われ、生産性向上や地方創生により人手不足や少子高齢化など社会的な課題の解決にも期待がかかるIoTですが、このようなデータを見る限り、諸外国に比べて日本の普及状況は高い数字ではありません。 しかし、日本でも先進的企業からの活用事例が徐々に出てきていますので、これからIoTを活用できている企業とそうでない企業との差は大きくなり、企業の業績にも大きな影響を及ぼす可能性があると考えています。
関連資格からみるIoTの盛り上がり
続いては関連した資格の観点から、IoTの盛り上がりを見ていきます。 2017年11月末時点で私が調べた限り、IoTと名前が付く資格は「IoTシステム技術検定」と「IoT検定」の2つだけでした。私は2つの資格試験を受験してきましたので、概要と併せて見ていきます。
○試験概要
試験名称 | IoTシステム技術検定 | IoT検定 |
---|---|---|
運営団体 | MCPC | IoT検定制度委員会 |
開始時期 | 2016年12月 | 2016年12月 |
受験料 | 15,100円(税込) | 10,800円(税込) |
試験方法 | マークシート 択一80問 | CBT 四肢択一70問 |
試験時間 | 90分 | 60分 |
合格基準 | 非公開 | 60%以上の正解 |
2つの試験の大きな違いは、試験時間と合格基準の公開の有無となります。資格の名称を見る限りでは、IoTシステム技術検定はどちらかと言うと技術系で、実際に導入する際のシステム構築に必要な知識が必要になるように見えます。一方、IoT検定はIoTを活用していくために必要なビジネス面や法務面なども含めた、全体的な知識が必要になるように見えます。
○受験内容
ここからは実際に私が受験した際の結果と併せて、情報をまとめてみます。今後、受験を検討されている方がいましたら、参考にして下さい。
学習期間 | 2週間 | 2週間 |
---|---|---|
受験時期 | 2017年12月2日(第3回) | 2017年12月18日 |
得点 | 非公開(体感では85%程度) | 77%(体感では80%程度) |
認定日 | 2017年12月18日 | 2018年1月5日 |
どちらの資格も問題集や過去問がないため、基本の学習はテキストを中心に暗記学習を行うことになります。私は業界に携わっているため、約2週間でテキストを読破(2週)することで試験に挑戦し、無事に合格しました。 得点が開示されていないので体感ですが、IoT検定の方が難易度は高かったように思います。
*追記:2018年6月15日 IoT検定レベル1に準拠のした問題集「IoTの問題集」が発売されました。これでだいぶ学習がしやすくなったと思います。
IoTシステム技術検定は単純な知識(知っているかどうか)の問われ方が多かったのに対し、IoT検定は複数の知識を知ったうえで回答する問われ方をしていたためと思います。この辺りは各HPでサンプル問題が公開されていますので、確認をしておく必要があると思います。どちらの試験も範囲や必要とされる知識量に大きな差はないと感じましたし、IT関連の業界でお仕事をされている方であれば、テキストを読破していくだけで合格できる難易度と思っています。
盛り上がりという観点から合格後の認定番号を見てみると、IoTシステム技術検定が1000番台前半、IoT検定が300番台後半となっていました。あくまで推察ですが認定番号が合格者の数だとすると、絶対数としてはまだまだ少ない状況だと考えます。
2つの観点から見えることは?
官公庁データ、及び関連資格の観点からIoTの盛り上がり状況を見てきました。この2つの観点は一見すると関係がないように思えますが、実は大きく関係していることが下図から見てとれます。
第4次産業革命に向けた課題(内部要因)
出典:総務省「平成29年度版 情報通信白書」より
この図を見ると、第4次産業革命に向けた課題(内部要因)の中で、「人材・外部リソース」に関する点が諸外国と比べて大きいことが見てとれます。つまり導入や検討に際して、社内のプロジェクトを推進する、または外部の企業とやり取りをするために必要な知識をもった人材が不足していて、IoTの導入が進んでいないことがわかります。
資格認知度の問題もあって合格者が少ないことが考えられますが、知識の習得に資格取得は有効だと考えます。人手不足や少子高齢化などの社会的な課題解決に効果を発揮するIoTが、人材不足で進んでいないとしたら少し悲しいですので、資格取得を通じて知識を持った人が増え、導入障壁になっている「人」の課題を解決し、IoTが更なる盛り上がりを見せることを期待しています。
アンドファン株式会社
中小企業診断士 田代博之