おはようございます。
最近、IT補助金などもそうですが、ITを使った経営力向上の取組みが加速しているように感じています。自社を分析し、環境変化に併せた経営課題や需要に合ったITツールを導入していくことで、業務効率化・売上アップといった経営力の向上・強化を図っていくことの重要性が増しているのだと思っています。
しかし、ITツールは単に導入すれば終わりというわけでは無く、しっかりと効果を生み出していく必要があります。
今回はそのために何が必要で、どんなことが課題になっているのかをまとめていきたいと思っています。
IT導入の目的
ITツール導入はひとつの手段だと思いますので、その究極的な目的は「利益の維持/拡大」だと思っています。つまり、大きく分けると「コストの削減」と「売上の拡大」になるかと思います。
コスト削減はイメージしやすいかと思いますが、PCの利用や電子メール、各種管理システムや計算システムなど、今まで人や紙で行っていたことをデジタル化して効率を上げることでコストを削減していくことになります。
また売上の拡大は、例えばホームページを利用して新規顧客を獲得したり、最近ではSNSを利用した知名度の向上、グループウェアやSFA(顧客管理システム)を利用して情報共有することも、こちらに分類されるかと思います。
IT導入の効果
さて、どちらの方向性であったとしても、実際に利益が向上しているのか?効果を感じているのかをデータから見ていきます。まずは2016年の中小企業白書から、IT投資別の企業の売上と売上高経常利益率を比べてみます。
出典:「業種別に見たIT投資有無と業務実績の関係」
中小企業庁2016年中小企業白書より
これを見るとIT投資の有/無で、売上2,369百万円/1,140百万円の差があり、売上高経常利益率で3.0%/2.7%の差があり、ある程度売上/利益に貢献していることがわかります。続いてはどの業務領域だと効果を感じているのかを見ていきます。
出典:「業務領域別のIT導入比率」中小企業庁2018年中小企業白書より
こちらを見ると、全体を通してITの導入比率が68.4%に対し、63.4%は何がしの効果を感じているのが見て取れますが、まだまだ改善の余地があることも同時に見て取ることができます。
IT導入の課題
ここではIT導入を行う際にどんな課題があるのかを見ていきます。
出典:「ITの導入・利用を勧めようとする際の課題」
中小企業庁2018年中小企業白書より
こちらを見ると、「コストが負担できない」「導入効果がわからない、評価できない」がそれぞれ3割程度で、次いで「従業員が使いこなせない」「旗振り役がいない」が2割程度となっていて、コスト面と人材面に課題があることがわかります。
またコスト面においても、現業務とITを適切に理解し効果を算出できるIT人材/能力が不足していると捉えることもできると考えています。ここの効果を評価できないと、当然企業としても導入の判断には至りませんし、効果が出るか不明なものにコストを負担することもできませんので、IT人材の面が課題として大きいように感じています。
IT人材の不足具合はよくニュースでも言われていますが、今後IT人材に対する不足数は拡大していく見通しが出ています。
出典:「IT人材の不足規模に関する推計結果」中小企業庁2018年中小企業白書より
現在での不足数は24.4万人程度ですが、2025年には43万人、2030年には58.7万人となっており、現在より大きな課題になる見通しです。
これを見ていると、必ずしも自社で人材を用意するのではなく、外部のリソースを活用することや、コスト面や保守面から安価で実現できるクラウドサービスの利用が有効になってくると考えられます。
IT導入の効果を出すために
続いてIT導入の効果を得るために、IT導入で期待した効果が得られた、またはある程度の効果が得られたと回答した会社の理由を見ていきます。
出典:「IT導入の効果がうまく得られた理由」中小企業庁2018年中小企業白書より
こちらを見ると、「目的/目標の明確化」「専任部署/担当の設置」「経営者の陣頭指揮」が約3割程度で、次いで「業務プロセスの見直し」「段階的な導入」が2割程度になっていることがわかります。
ここで更に、3年前と比べた労働生産性が向上した会社が、どのような取り組みを行っていたのかを見ていきます。
出典:「IT導入の効果がうまく得られた理由と労働生産性」中小企業庁2018年中小企業白書より
これを見ると「業務プロセスの見直し」「経営者の陣頭指揮」「外部のコンサル」が、IT導入後の効果を高めていることが見て取れます。外部のコンサルも業務プロセスの見直しや業務改善を行ったのではないかと想像できるため、効果を高めるためには、「経営者の陣頭指揮のもとにIT導入に合わせて適宜業務プロセスを見直していくこと」が重要であると考えられます。
最後に
昨今のITやIoTなどの状況を見ていると、これらのツールを使って経営力を向上していくことは、これからますます重要性が増してくると考えています。むしろ活用できないままでいると、置いて行かれてしまう可能性すら感じています。
内部リソースだけでは難しい場合は外部のリソースを上手に活用しながら、経営者が陣頭指揮のもと業務プロセスの見直しも合わせながら、IT導入を進めて行ってください。
今回はIT導入の効果の部分にフォーカスをあてましたが、次回以降で「業務プロセスの見直しや業務改善」についても、まとめていきたいと思っています。
それではまた。
アンドファン株式会社
中小企業診断士 田代博之