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「教える」を学ぶこと

kyouiku

おはようございます。

学校教育や社会的に出てからも、今まで様々なことを学んできたと思います。

しかし、意外と教えられていないことが、人に何かを「教える」というがあります。

お子さんに何かを教えたり、同僚や後輩に仕事を教えたりなど、普段の生活でも多い「教える」事ですが、意外と人に何かを「教える」ということを学んだことは少ないと思います。

そこで今回は、「教える」事を設計するという意味で、インストラクショナルデザインという学問があり、これについて学んできましたので、ご紹介します。

インストラクショナルデザインとは?

インストラクショナルデザイン(Instructional Design)とは、教えるための技術と科学を扱う学問で、新卒向けの入社研修の企画、eラーニングの作成など、様々な場面で活用されています。

元々はアメリカ軍の訓練モデルが基盤となり、1980年代頃から企業教育における人材育成の場で、取り入れられるようになったようですが、2000年頃からe-ラーニングが増加したタイミングで認知が広まるようになったと言われています。

インストラクショナル・デザインの目的は、教える効果を最大化、つまり学習者の理解/習熟度を上げて全体の効率を高めることにあります。

とはいえ、教え手がどう教えるか?だけを対象としているわけではなく、インストラクションが効果的に進むように、全体をデザインすることを大事にしています。主役は学び手にあり、教え手のレクチャーは方法論の一つと位置づけられます。

インストラクショナルデザインの基本前提

インストラクショナルデザインには、3つの基本前提がありますので、まずはそれをご紹介します。

①学習は多くの変数に左右される

何かを学ぶときに様々な要因が影響するということですが、心理学療法に於ける効果の要因から、学び手の学習能力(教育外的要因)が40%、学び手と教えての人間関係が30%、期待や希望などプラセボ効果が15%、モデルや技法は15%と言われています。

つまり、教え方は15%程度の重みしかないのですが、ここが変わることで全体が変わる可能性があるとされ、ここを改善していく意味はあります。

②効果的に学習を支援する方法はある

達成しようとするゴールが定まれば、適した学習方法があるという前提です。教える人の意気込みだけの観点で教えたと満足するのではなく、目標が達成されたかの観点で効果的であったかの測定を行うことができます。

③支援の方法は常に改善できる

いわゆるPDCAサイクルと考え方は似ていますが、ADDIEモデル「ニーズの評価と分析(Anaiyze)」「デザイン(Design)」「開発(Develop)」「実装(Implement)」「導入後の評価(Evaluate)」の、5つの手順を改善サイクルとして回していくことが重要になります。

インストラクショナルデザインでは、この3つの前提を把握したうえで、検討していくことが必要になります。

インストラクショナルデザインの応用領域

私なりのポイントとしては、「教える」ことを3つの種類に分け、それぞれに必要となる観点が違っているとした点にあります。

運動技能のインストラクション

自転車に乗る、スマホを操作するなど、体を使う技能を教える時には、「スモールステップ」「即時フィードバック」が重要とされています。

最終的に到達したい状態(例:自転車に乗る)は、単純作業の複合ですので、教える時には最小単位(例:ペダルをこぐ)まで分解し、徐々に難易度を上げながら教えていくということです。

即時フィードバックは、学び手のいい行動の際にすぐに反応してあげることが重要になります。

認知技能のインストラクション

何かを理解したり計算したり、読んだり書いたりなど、頭を使う技能のことで、この時は人間の記憶や思考の仕組みを知ることが重要となります。

 例えば、語呂合わせや関連したことと一緒に教えていくと、よく記憶に残ったりします。また間違ってしまった際、なぜ間違えたのか?を考えて教えていくことで、正しく教えなおすことができます。

態度のインストラクション

これは普段皆さんがイメージされる言葉と一緒の意味で、挨拶をする、時間を守る、元気よく話すなどの行動のことを指します。この態度は運動技能と認知技能が備わっていないといけないという条件があります。

つまり、挨拶をする場合、大きな声で話す運動技能と、良い挨拶は気持ちがよい、人と会うときには挨拶をするという認知技能があって、初めて態度に現れることになります。そしてこの態度はその人が属している共同体(コミュニティ)の中で、作り上げられるものになります。

最後に

インストラクショナル・デザインにはこの他にも、さまざまな理論が存在しています。今回はご紹介できませんでしたが、新たな機会にまとめてみたいと思っています。

人に物事を教える際、どうしても「学び手が悪い」と考えて行き詰ってしまうこともあると思いまう。私自身も今まさに勉強中ですが、皆様もお時間ある時にインストラクショナルデザインを勉強してみてください。

それではまた。

アンドファン株式会社

中小企業診断士 田代博之